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  • Michihisa KOYAMA

CCUSのこれまでとこれから~世界編~

更新日:2021年6月17日

地球温暖化につながる温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する技術は、CCS(CO2 Capture and Storage)と呼ばれます。しかし、CO2を回収し、貯留するだけではコスト増につながるだけで、経済インセンティブがないためなかなか導入が進みんできませんでした。

回収したCO2を利用することができれば、価値を産み出すことができ、また将来には炭素が循環する社会を実現することができます。そのため、CCUS(CO2 Capture, Utilization and Storage)が近年注目されています。

下図には、世界におけるCCUSによるCO2の固定化能力を示します。

(各種資料から著者作成)


これまで、CCUSの用途としては、CO2を石油油田に注入し、石油の回収量を増やす石油増進回収(EOR; Enhanced Oil Recovery)が最大の用途でした。中でも、2010年に運用開始した米国Century Plantが年間840万トンのCO2貯留能力で、最大規模となっています。2020年段階では、世界で年間4000万トン程度のCO2貯留能力があることがわかります。


CCUSは、短期的には、化石資源の使用に伴い排出されるCO2を回収し、大気中に出さないという役割が期待されています。長期的には、カーボンニュートラルのエネルギーであるバイオマスの利用に伴って排出されるCO2を回収することでネガティブエミッションを実現するBECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage)として期待されています。


 2050年の脱炭素社会に向けた役割を展望するため、下図には、これまでのCCUSの固定化能力と、IPCCの1.5℃特別報告書において示されている代表的シナリオにおける想定を示します。

(各種資料から著者作成)

 

 縦軸は対数軸で示されていますので、2020年から2030年、そして2040年に向けて、一桁ずつ固定化能力を増やしていくことが想定されています。例えば10年間で4000万トンを4億トンに増強するためには、年間3600万トンの設備増強を10年間行うことが必要になり、4億トンを40億トンに増強するためには、年間3億6000万トンの設備増強を10年間継続することが求められます。840万トンのEORであれば、それぞれ年間4.2ヶ所ずつ、42ヶ所ずつ、に相当します。

 これまでの延長線の考え方では実現できないであろう蓋然性が高いわけですので、新しい考え方や枠組みが必要となることは自明です。BECCSについては、カーボンニュートラルのエネルギーであるバイオエネルギーを生産するために必要となる土地面積に関する指摘がなされています。そもそも10年間に一桁ずつの大幅増を前提とする1.5℃シナリオは大きな不確実性を内包しており、より保守的なCCUSの進展を想定した新たなビジョンを示すことが重要と言えるでしょう。


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